映画『トータル・リコール』(1990)の名言といえば、まず思い浮かぶのが “Two weeks” でしょう。
火星の入国審査で滞在期間を問われた女性が「二週間よ……二週間……」と顔をゆがめて繰り返す――特殊メイクで描かれた、不気味でインパクト抜群のシーンです。
“Two weeks” 以外にも、よく知られているのがこの二つの決めゼリフ(one-liner)。
“Get your ass to Mars”
(ケツをゲットして火星へ?)
“Consider that a divorce”
(あれを離婚と考慮しろ?)
こんな短いセリフでも、パッと意味をつかむのは意外と難しいもの。辞書の最初に載っている意味を当てはめただけでは、どこか不自然な解釈になってしまいます。単語の意味は文脈によって変わるからです。
この記事では『トータル・リコール』から5つのセリフを厳選。シーンを振り返りながら、おなじみの単語が持つ意味の広がりを見ていきます。
- “Get your ass to Mars” など5つの名言から英語を学ぶ
- 基本単語 “get” “consider” “feed” の実用的な使い方
- “clever” と “smart” のニュアンスの違い
- 映画のシーンと結びつけて覚える実践的な英語学習
トータル・リコールの名言5選で英語を学ぶ:さっさと火星に行け!
- “Get your ass to Mars”|移動を表す “get” の用法
- “Consider that a divorce”| “consider A B” で「AをBと見なす」
- “What have you been feeding this thing?”|「食わせる」を意味する “feed”
“Get your ass to Mars”|移動を表す “get” の用法

Get your ass to Mars.
(さっさと火星に行け)注意 クリックで音が出ます。
シーン
自分とそっくりな男、ハウザーからのビデオメッセージを見るクエイド(アーノルド・シュワルツェネッガー)。ハウザーはクエイドに対し「火星に行け」と一方的に命じます。物語の転換点となる重要なシーンです。
英語ポイント
直訳は「お前のケツ(体)を火星に運べ」。ここでの “get” は 「手に入れる」ではなく「移動させる」= “move” に近い意味です。
“your ass” は「お前自身」「お前の体」を指す粗野なスラング。戦争映画では、鬼軍曹が新兵に
Move your ass!(さっさと動け!)と怒鳴ったりします。
相手を一人の人間として扱うというより、「命令通りに動かす対象」として突き放す言い方です。
さらに、シュワちゃん特有の訛り――一語一語を区切るようなスタッカート調の発音――が、このセリフに問答無用の迫力を与えています。
セリフ解説
ハウザーにとってクエイドは未来の自分。にもかかわらず、彼はクエイドの状況や心情には一切配慮しません。
「俺の体を火星に届けろ、それがお前の任務だ」
そう言わんばかりの命令口調には、記憶を消された主人公を道具のように扱う冷酷さがにじみ出ています。
“Consider that a divorce”| “consider A B” で「AをBと見なす」

Consider that a divorce.
(離婚成立だ)注意 クリックで音が出ます。
シーン
偽の妻ローリーに銃を向けるクエイド。ローリーは「ハニー、私たちは夫婦よ」と甘くささやきかけ、反撃の隙をうかがいます。しかしクエイドは迷わず引き金を引き、このセリフを言ってのけるのです。
英語ポイント
直訳は「それ(撃ったこと)を離婚と見なせ」。”consider” は「考慮する」と習いますが、
consider A B = AをBと見なすという用法があります。
“consider” は法廷や公的な場面でよく使われるやや堅い動詞。
The court considers the case closed.(当法廷は本件を終結したものと見なす)
クエイドのセリフはあたかも裁判官の宣告のように響きます。
セリフ解説
愛する妻が実は監視役の偽物だったと知ったクエイド。彼は一切ためらわずに引き金を引きます。
離婚届ではなく、一発の弾丸で関係を終わらせる――「死が二人を分かつまで」という結婚の誓いを、最も暴力的な形で実行してしまうブラックユーモアです。
“What have you been feeding this thing?”|「食わせる」を意味する “feed”

What have you been feeding this thing?
(こいつに何を食わせてきたの?)注意 クリックで音が出ます。
シーン
ハウザーの残したメモを頼りにメリーナを訪ねたクエイド。彼女はいきなりクエイドの股間をわしづかみにして、この問いをぶつけます。
英語ポイント
“this thing” は、クエイドのつかまれた「股間」。そこに何を与えてきたか、つまり「どんな女性を相手にしてきたのか」ということ。
“feed” は「食べ物を与える」だけでなく、「生活のために養う」「供給する」という意味も持つ動詞。
このシーンの直前、クエイドが乗ったタクシーの運転手はこう言いました。
I got five kids to feed.(五人のガキを食わせにゃならん)
日本語の「食わせる」という感覚に “feed” はぴったりです。
セリフ解説
久しぶりに再会した男への、メリーナ流の過激な「挨拶」。二人がただならぬ関係であったことが容易に伝わります。
一瞬たじろぐクエイド。しかしすぐに答えます。
“Blondes.”(金髪女だ)
黒髪のメリーナに対し、金髪の女たちを相手にしてきたという返答。偽の妻ローリーが金髪だったことを踏まえた気の利いた切り返しです。
トータル・リコールの名言5選で英語を学ぶ:人間は行動で決まる
- “Clever girl”(賢い女だ)|”clever” の抜け目ない賢さ
- “A man is defined by his actions”|受動態で格調高く
- トータル・リコールの名言5選で英語を学ぶ:まとめ
“Clever girl”(賢い女だ)|”clever” の抜け目ない賢さ

Clever girl.
(賢い女だ)注意 クリックで音が出ます。
シーン
自宅で襲われたクエイド。捕らえた相手は妻のローリーでした。彼女は真実を語るふりをしながら、追手が来るまでの時間を稼ぎます。ハメられたと気づいたクエイドがつぶやく一言です。
英語ポイント
“clever” は「賢い」という意味ですが、”smart” と比べると少し違った響きを持ちます。
- She’s smart.(彼女は頭がいい)
→ 知識や判断力がある、という素直な評価 - She’s clever.(彼女は賢い)
→ 抜け目ない、うまく立ち回る、という含み
ただし、”clever” は必ずしも悪口ではありません。
この “Clever girl” には、「してやられた」という悔しさと「やるじゃないか」という感心が込められています。
セリフ解説
偽の妻を演じ続けてきたローリー。会話で時間を稼ぐその手腕に、クエイドは敵ながらあっぱれと認めざるを得ません。
なお、”Clever girl” というセリフは『ジュラシック・パーク』にも登場しますが、公開は『トータル・リコール』が先です。
“A man is defined by his actions”|受動態で格調高く

You are what you do. A man is defined by his actions, not his memory.
(何をするかが君自身だ。人を決めるのは行動であって、記憶ではない)注意 クリックで音が出ます。
シーン
レジスタンスのリーダー、クアトーとの対面を果たすクエイド。失われた記憶を取り戻したいと願うクエイドに、クアトーはこの言葉を授けます。
英語ポイント
“You are what you do” は「あなたは、あなたの行動そのものだ」という意味。
“You are what you eat”(あなたは食べたものでできている)のもじりで、行動こそが人間を形作る、という考えが込められています。
“define” は「定義する」「明確にする」という動詞。受動態と能動態で印象が変化します。
- 受動態:A man is defined by his actions.(人は行動で決まる)
→ 客観的な真理のように響く - 能動態:Actions define a man.(行動が人を決める)
→ 主語が明確で技術文書向き
“is defined” と受動態にすることで、このセリフは格言めいた重みを持ちます。
セリフ解説
記憶を失い、自分が何者なのか分からないクエイド。自分は本当にハウザーなのか?
その問いにクアトーは答えます。「今、何を選び、どう行動するか」。それこそが君自身なのだと。
美女を手に入れ、悪党を倒し、火星を救う――リコール社での説明通りに物語は展開します。果たしてこれは現実なのか、それとも作られた記憶にすぎないのでしょうか。
トータル・リコールの名言5選で英語を学ぶ:まとめ
『トータル・リコール』の5つの名言を通じて、基本単語の応用的な使い方を見てきました。
“get” は「手に入れる」だけでなく「移動させる」、”consider” は「考慮する」だけでなく「見なす」、”feed” は「供給する」だけでなく「食わせる」――辞書の最初に載っている意味だけでは、映画のセリフは正しく理解できません。
“clever” と “smart” のニュアンスの違いや、受動態 “is defined” が生む格言的な重みなど、単語の持つ幅広い意味を知ることで、英語の理解はぐっと深まります。
映画の印象的なシーンと一緒に覚えた表現は、参考書で学んだ知識よりもずっと記憶に残ります。お気に入りの映画で、ぜひ同じように英語学習を楽しんでみてください。
