「私はシミュレーションの中にいるのか」(am I in a simulation)という検索が、英語圏で年々増えているのをご存じですか。
きっかけは、1999年公開の映画『マトリックス』。この作品が世界中に「シミュレーション仮説」を広め、多くの人々に現実への疑問を投げかけました。
本記事では、マトリックスから厳選した15の名言を取り上げ、英語学習に役立つポイントを分かりやすく解説していきます。作品の理解を深めたい映画ファンの方々にも、お役に立てる内容を目指しました。
- 映画『マトリックス』の代表的な名言15選を紹介
- 英文法の解説で使える英語力を身につける
- 哲学的な名言の背景を深掘り
- 音読に適したクールなセリフも紹介
マトリックスの名言で英語を学ぶ【前半】赤い薬か、青い薬か

- マトリックスに捕まる
- 赤い薬は不思議の国
- 現実の世界
- カンフー習得
- 速いと知れ
- 心を解き放て
- うわっ
不気味なメッセージ

The Matrix has you…
マトリックスがお前を捕らえた…
シーン:
コンピューター画面に突然現れた謎のメッセージ。ネオが最初に登場するシーンです。
英語解説:”have” の支配的なニュアンス
ここでの “has” は単に「持っている」という意味ではありません。主語は “The Matrix” という正体不明の存在。この “has/have” には「すでに逃げ場はない」「完全に捕捉した」という、捕食者めいた響きがあります。
- Gambling has him.(あいつはギャンブルから抜け出せない)
- That “one more episode” has me.(「あと1話だけ」がやめられない)
「何者かに所有されている=逃れられない」という、物理的かつ精神的な拘束を暗示する緊張感のある表現となっています。
学習ポイント:
“have” は基本的な動詞ですが、文脈によって解釈が変わります。この「多義性」を理解することが大切です。
赤い薬と青い薬
You take the blue pill – the story ends, you wake up in your bed and believe whatever you want to believe. You take the red pill – you stay in Wonderland and I show you how deep the rabbit hole goes.
青い薬を飲めば、物語はそこで終わる。ベッドで目覚め、信じたいものを信じればいい。赤い薬を飲めば、不思議の国にとどまる。ウサギの穴がどれほど深いか見せてやろう。
シーン:
モーフィアスが両手を差し出し、ネオに究極の選択を迫ります。
英語解説:Ifの省略
通常なら “If you take…”(もし…を飲めば)とするところですが、あえて “If” を使わず事実だけを並べています。
- You take the blue pill.(青い薬を飲む)→ The story ends.(物語は終わる)
現在形の文を畳みかけることで、「もしも」の仮定の話ではなく、今まさに起こりつつある未来という切迫感が出ます。単に可能性を示すのではなく、避けられない運命の分岐点であることを文構造そのもので示しているのです。
“Wonderland”(不思議の国)や “rabbit hole”(ウサギの穴)は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』への明白な言及。アリスが白ウサギを追いかけて穴に落ち、異世界へと迷い込む物語と、マトリックスの現実の裏側へ踏み込むという構造を重ね合わせた文学的な比喩です。
文化的影響:ネットスラング化した “Red pill”
このセリフは映画そのものを象徴する名言となりました。心地よい嘘(青い薬)を拒否し、つらい真実(赤い薬)を受け入れるという意味で、現在でもインターネット上の流行表現として広く使われています。
2020年5月には、実業家イーロン・マスクが “Take the red pill” とX(旧Twitter)に投稿して話題になりました。
学習ポイント:
“If” を使わずに文を並べて条件を示す手法は、相手に強い警告や選択を迫るシーンでよく使われます。
- You move, you die. (動いたら死ぬぞ = 動くな)
接続詞を省くことで、スピード感と緊張感が生まれる表現です。
リアルな世界

Welcome to the real world.
ようこそ、現実の世界へ。
シーン:
赤い薬を飲んで培養ポッドから目覚めたネオに、モーフィアスが告げる一言。
英語解説:皮肉を込めた歓迎
“Welcome to…” は歓迎の定番フレーズですが、ここでは荒廃した未来世界への皮肉な歓迎として使われています。似た用法は他の映画にも見られます。
- Welcome to the party, pal!(パーティへようこそ!)— 『ダイ・ハード』(Die Hard, 1988)
- Welcome to Earth!(地球へようこそ!)— 『インデペンデンス・デイ』(Independence Day, 1996)
どちらも決して歓迎すべきではない状況での、皮肉や挑発を込めた使い方です。
学習ポイント:
“the real world” という表現は「現実社会」「実社会」という意味で日常会話でもよく使われます。”Welcome to the real world.” は「これが現実だ」というニュアンスで使えます。
カンフーをダウンロード
I know kung fu.
カンフーができる。
シーン:
シートに座ったまま武術のプログラムをインストールされるネオ。目を開けてつぶやきます。
英語解説: “can do” vs “know”
通常「〜ができる」と言いたい時は “I can do kung fu.” のように表現しますが、ここでは “know” を使うことで単なる能力以上の意味を持たせています。
“know” には「熟知している」「身につけている」という深い理解を示すニュアンスがあります。
- I know Elvish.(エルフの言葉を操る)
- He knows ninjutsu.(やつは忍術の使い手じゃ)
ここでは “know” を使うことで、頭に直接インプットされた知識・技術であることを一語で表現しています。SF的な設定を見事に表現したフレーズです。
学習ポイント:
“know” と “can” の使い分けを意識しましょう。武術や外国語は “know” で表現できます。
速いと知れ!
Don’t think you are, know you are.
速いと思うな、速いと知れ。
シーン:
仮想空間の道場でモーフィアスと手合わせするネオ。その動きを見たモーフィアスが放つ言葉です。
英語解説:省略の美学
直前のモーフィアスのセリフ “You’re faster than this.”(お前はもっと速い)を受けているため、完全な文にするとこうなります。
“Don’t think you are (faster), know you are (faster).”
“faster” を省略することで、リズムとインパクトが生まれます。
ブルース・リーの名言 “Don’t think. Feel.”(考えるな、感じろ)— 映画『燃えよドラゴン』(Enter the Dragon, 1973)を想起させる東洋思想的な響きです。
学習ポイント:
英語では文脈から明らかな語句は省略されることが多く、それによってセリフにリズムとパンチが生まれます。
心を解き放て
You have to let it all go, Neo. Fear, doubt, and disbelief. Free your mind.
すべて捨て去れ、ネオ。恐怖、疑い、不信。心を解き放て。
シーン:
ジャンプ訓練で、モーフィアスはネオにアドバイスを送ります。
英語解説:執着を手放す
“let it go” は「手放す」「諦める」という意味の重要なイディオム。単に「忘れる」(forget)ではなく、「自らの意志で手放す」という能動的なニュアンスを持ちます。
- “Let it go, let it go. Can’t hold it back anymore” ―『アナと雪の女王』(Frozen, 2013)
(手放して、解き放って。もう抑えきれない) - Let go of that one awkward LINE.(あの気まずいLINE、もう気にするな)
ここでは、恐怖(fear)、疑い(doubt)、不信(disbelief)という三つの心理的な障壁を手放すことで、心は自由(free)になるという考え方が示されています。これは仏教の「執着を捨てよ」という教えにも通じる哲学と言えるでしょう。
学習ポイント:
“let go” は日常会話でよく使われます。物理的にも精神的にも「手放す」場面で使えます。
ウォウ…
Whoa.
うわ。
シーン:
隣のビルへ軽々とジャンプして見せたモーフィアス。それを見たネオの反応です。
英語解説:言葉にならない衝撃
“Whoa”(発音は「ウォウ」に近い)は、キアヌ・リーブスの代名詞的なセリフ。単なる驚きの “Wow” とは異なり、”Whoa” には以下のようなニュアンスがあります。
- 思わぬ出来事への反応
- ことの重大さに気おされる感覚
元々は馬を止める時の掛け声「どう!」だったことから、「ちょっと待て」という意味も含んでいます。
学習ポイント:
感嘆詞の微妙なニュアンスの違いを学びましょう。”Wow”(驚き)、”Whoa”(圧倒)、”Oh”(理解)など、場面によって使い分けられます。
マトリックスの名言で英語を学ぶ【後半】救世主としての覚醒

- 無知こそ至福
- スプーンなどない
- 救世主と恋は同じ
- 人間は病気
- 山ほどの銃
- よけてみろ
- 道を知り道を歩く
- アンダーソン君
- 愛した人が救世主
サイファーの裏切り

Ignorance is bliss.
無知こそ至福。
シーン:
仮想現実のレストランで密約を交わすサイファーとエージェント・スミス。サイファーがステーキをかみしめながら漏らしたセリフです。
英語解説: “bliss” は特別な幸福
“Ignorance is bliss.” は日本語の「知らぬが仏」に当たる英語の諺(proverb)。”bliss” は単なる「幸せ」(happiness)よりも強い意味を持ち、「この上ない幸せ」「無上の喜び」といったニュアンスがあります。
- Coffee-before-anyone-talks-to-you bliss.(誰かに話しかけられる前の、至福のコーヒー)
- Airplane mode bliss.(機内モードにする喜び)
偽物だと知りつつレア・ステーキと赤ワインを堪能するサイファー。まさに至福のひとときです。
学習ポイント:
英語の諺を覚えると教養のある表現ができます。この諺は18世紀の詩人トーマス・グレイの詩が出典とされます。
スプーン・ボーイとの出会い
There is no spoon.
スプーンなんてない。
シーン:
念力でスプーンを自在に曲げ、元に戻してみせる少年。そのスプーンをネオに手渡して言います。
英語解説:存在の否定
“There is no spoon.” は、単に「ここにはスプーンが存在しない」という意味ではありません。”There is no…” という構文は、存在自体を完全に否定する強い表現です。
- There is no undo button in life.(人生に「元に戻す」ボタンなどない)
-
There is no fixing that screenshot.(あのスクショはもう消せない)
マトリックスがプログラムによる仮想現実である以上、実体として存在しているものは何一つありません。曲げるべきはスプーンではなく自分の認識である、という哲学的メッセージなのです。
学習ポイント:
キッチンにスプーンが一本もない場合などは、複数形で “There are no spoons.” と言うのが自然な表現。単数形で “There is no spoon.” とすることで「スプーンという概念/存在そのもの」を否定しており、これが哲学的な深みを生んでいます。
オラクル(預言者)の言葉
Being the one is just like being in love. No one needs to tell you you are in love, you just know it.
救世主であることは、恋をしているのと同じ。誰かに言われる必要はない。恋をしていると、ただ分かるのよ。
シーン:
自分が救世主であるか確信が持てないネオに、オラクルが言葉を授けます。
英語解説: “To be” か “Being” か、それが問題
もし “To be the one”(不定詞)だと、「これから救世主になる」という未来のニュアンスになります。
一方、オラクルが使った “Being the one”(動名詞)は、「救世主として生きること」という現在の状態を指します。「未来の話じゃない。あなたが今、どう生きるかの話よ」というニュアンスを出すために、あえて “Being” を選んでいるのです。
- To be a freelancer sounds free.(フリーランサーの自由な響き)
- Being a freelancer means deadlines.(フリーランサーは締め切りとの闘い)
“Being” は、状態や在り方を抽象的に捉える表現で、「救世主であるという感覚」を一般論として語るのに適しています。
学習ポイント:
動名詞(being/doing)と不定詞(to be/to do)のニュアンスの違いを理解しましょう。
スミスの人間嫌い
Human beings are a disease, a cancer of this planet. You’re a plague and we are the cure.
人間は病気だ。この惑星の癌だ。お前たちは疫病で、我々こそが治療薬だ。
シーン:
スミスはモーフィアスを捕らえて尋問します。その際に語られる人間観です。
英語解説:冠詞 “a” vs “the”
冠詞の使い分けに注目してください。スミスは人間を、
- a disease(ある病気、数ある病気のひとつ)
- a cancer(一つの癌)
- a plague(一つの疫病)
と、不定冠詞 “a” で表現し、人格を否定して単なる「処理対象」として扱います。
一方、マトリックスのエージェントである自分たちは、
- the cure(唯一絶対の治療法)
と、定冠詞 “the” を使うことで、唯一の解決策だと主張するのです。
映画の引用:
よく似たセリフに、シルベスター・スタローンが『コブラ』(Cobra, 1986)で放った決めゼリフ “You’re a disease, and I’m the cure.”(お前は病気で、俺がその薬だ)があります。
学習ポイント:
英語の冠詞(a/an/the)は単なる文法要素ではありません。話し手の考え方が表れているのです。
モーフィアスを助け出せ

Guns. Lots of guns.
銃だ。山ほどの銃。
シーン:
モーフィアスの救出を決意したネオに、タンクが尋ねます。
“What do you need? Besides a miracle.”(何が必要だ?奇跡以外に)
それに対するネオの答え。
英語解説:省略の効果
完全な文にすれば、
“I need guns. I need lots of guns.”
となりますが、主語(I または We)と動詞(need)を省略することで、
- 緊迫感が生まれる
- リズムが良くなる
という効果が生まれます。
映画での引用:
このセリフは『ジョン・ウィック:パラベラム』(John Wick: Chapter 3, 2019)で、キアヌ・リーブス自身がオマージュとして使用しました。
学習ポイント:
英語では文脈から明らかな場合、主語や動詞を省いた断片的な表現(fragment)がよく使われます。緊迫した場面などで効果的です。
「銃弾よけ」の限界
Dodge this.
よけてみて。
シーン:
超人的なスピードで弾丸をよけるエージェント。その頭に銃を突き付け、トリニティが言い放ちます。
英語解説:命令形による皮肉
“Dodge this.” は命令文ですが、ここでは「よけられるならよけてみろ」という挑発。”dodge” は「素早く身をかわす」という意味です。
- I dodged a bullet there.(マジでヤバかった)
-
You can dodge bullets, not consequences.
(弾丸はかわせても、報いからは逃れられない)
至近距離(point-blank)からの銃撃は物理的にかわせません。実質的に「お前の能力も無意味だ」という宣告になっています。
学習ポイント:
英語の命令形は文脈によって「指示」「依頼」「挑発」「皮肉」など様々なニュアンスを持ちます。
道を知り、歩く
There’s a difference between knowing the path and walking the path.
道を知ることと、道を歩くことは違う。
シーン:
救出されたモーフィアスは、ネオにさらなる教えを授けます。
英語解説:理論 vs 実践
この文は “There’s a difference between A and B” (AとBには違いがある)という比較構文です。
- knowing the path(道を知ること)= 理論・知識
- walking the path(道を歩くこと)= 実践・経験
道場のシーンを思い出してください。モーフィアスは、
“Don’t think you are, know you are.”(速いと思うな、速いと知れ)
と諭しました。”think”(推測)ではなく “know”(確信)へ、という段階。
今回は “know“(知識)から “walk“(実践)へと進化します。ネオの精神的な成長に応じた段階的なアドバイスなのです。
学習ポイント:
動詞(know/walk)を名詞化した動名詞(knowing/walking)は名詞として扱えます。このセリフでは “between” の目的語ですが、主語や補語にもなりえるのです。
宿命の対決

Mr. Anderson.
ミスター・アンダーソン。
シーン:
地下鉄のホームでエージェント・スミスと対峙するネオ。スミスの第一声です。
英語解説:人格の否定
スミスは一貫してネオを「アンダーソン君」と呼び、決してネオとは呼びません。ネオを救世主として認めず、あくまでシステムの一部として支配下に置こうとする意思の表れです。
スミスの独特の発音 “Mister… Anderson” (ミスター…アンダーソン)には、意図的な間(ポーズ)が置かれています。この間によって「冷淡さ」や「あざけり」が表現されます。
学習ポイント:
英語では名前の呼び方が重要な意味を持ちます。ファーストネーム(親密)、ラストネーム(フォーマル)、ニックネーム(友好的)の使い分けに注意しましょう。
おまけ:トリニティの告白
…The Oracle told me that I would fall in love and that that man… the man that I loved would be The One.
オラクルは言ったわ。私は恋に落ちる。その愛する人こそが救世主だと。
シーン:
エージェントに撃たれて心停止したネオに、トリニティが熱く静かに語りかけます。
英語解説: “The One” のダブルミーニング
“The One” には二つの意味が重なっています。
- 救世主(The Chosen One)
- 運命の相手(The One = 運命の人)
英語では “the one” を運命の人(やモノ)という意味で日常的に使います。
- The one is usually obvious in hindsight.(本物は後から分かる)
- Everyone is looking for the one. Few read the manual.
(最高を求めても、地道な努力はしない)
トリニティの愛こそが、救世主を目覚めさせる最後の鍵でした。まさにパワー・オブ・ラブですね…
学習ポイント:
英語の “the one” は映画や歌詞にもよく登場する、押さえておきたい重要フレーズです。
まとめ:マトリックスの名言から英語を学ぼう

タイトルの「マトリックス」には、実は深い意味が込められています。一つは数学の「行列」。この世界が、プログラムやデータによって構築された、いわば数式の世界であることを表しています。
もう一つは、ラテン語の「母(Mater)」に由来する「子宮」という意味。人々はポッドという作り物の子宮の中で眠り、仮想現実という終わりのない夢を見続けるのです。
ネオは赤い薬を選び、その夢から目覚めて本当の世界を知りました。英語を学ぶこともまた、新しい世界への扉を開くこと。これらの名言が、あなたにとっての「赤い薬」となり、英語という新しい現実へ踏み出すきっかけとなれば幸いです。
【番外編】もっとマニアックな名言を知りたい方へ
本記事では英語学習に役立つ王道の名言を厳選しましたが、紹介しきれなかった「隠れた名言」もまだまだあります。
「もっとディープな世界に浸りたい」「普通の英語解説じゃ物足りない」という方のために、noteでちょっとマニアックな隠れ名言5選を公開しました。
モーフィアスの仲間であるスイッチのラップのような韻踏みセリフや、エージェント・スミスの人間くさい一言など、かなりコアな内容となっています。マトリックス通なら思わずニヤリとすること間違いなし。ぜひ合わせて読んでみてください。
👉 マトリックスの「隠れた名言」5選!英語で味わう映画の深み(noteで読む)
